ポリマー原料の発酵生産を目指した油糧微生物の分子育種

阪本 鷹行
(徳島大学 大学院生物資源産業学研究部 助教)

2016年10月31日月曜日

やさいい科学技術セミナーを終えて

遅ればせながら、先日(1024日)にやさしい科学技術セミナーを開催させていただきました。
地元高校生20名を招き、「もっと知りたいキノコという名の微生物」というタイトルで講演しましたが、ちょっと走った説明になったのが反省点です。

非常に緊張しております

セミナー開催に当たって、改めてキノコのことを調べ直しましたが・・・調べるのが面白すぎて、資料作りが進まない進まない()
「キノコがつくる薬と毒」というサブタイを付けましたが、ほとんど毒の話になってしまいました。・・・・・・毒の方がよく調べられているし、毒の話の方が高校生好きそうだし、個人的に興味深いし(^^;)

セミナーでも明言させていただきましたが、毒キノコが”毒キノコ”として認識されているのは、それに余りある犠牲者がいるからなのです。その方々、そして好奇心から毒キノコを試食された奇特な先人たちに敬意を表しつつ、セミナーの題材とさせていただきました。また、今日 毒キノコの毒成分として知られている化合物については、並々ならぬ研究の成果であって、発見者の方々には本当に頭が下がります。

セミナーの最後に冬虫夏草の実物を見てもらいましたが、やはり実物に触れている方が学生達もイキイキしていましたね。『百聞は一見に如かず』と申しますが、今回のセミナーに来てくれた学生たちには、今度は是非フィールドに出て、実物のキノコに触れてもらいたいものです。(カエンタケは触れてはいけませんよ)


・・・・・・さて置いて、聴講に来られた学生たちが、私の専門を 『キノコ毒』 と勘違いしていないかが心配です。
私、毒は扱っていませんので、悪しからずm(‐‐)m

最後に、それぞれ名前は伏せさせていただきますが、本セミナーに参加いただいた地元高校生の皆様および教頭先生、また開催するにあたってご尽力いただいた国際科学技術財団、徳島大学のスタッフの皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

2016年9月6日火曜日

植物を助けるキノコ

気が付けば、夜にはコオロギなど秋の虫の声が聞こえるようになりました。
しかし、今年はツクツクボウシの声を聞かなかった気がします(in 徳島)。

さて、いよいよキノコの旬(?)ですね! やはりキノコの話をさせていただきたく存じます。

といっても私の仕事ではなく、先日掲載された論文が面白かったので、そちらを話のネタにしたいと思います。静岡大学の河岸教授の研究室のお仕事です。
(研究室HP: http://www.agr.shizuoka.ac.jp/c/biochem/ )

ざっくり申し上げると、『キノコが植物の生育を促進する化合物を出している』 というものです。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1340354016300377

キノコには地上部で環状に子実体を形成する種があり、日本では”菌輪”あるいは”菌環”と呼ばれます。

残念ながら最近出会っていないので写真等はありませんので、Wikipedia先生からの転載で、リンクも貼らせていただきます。

(Wikipediaより転載; https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8C%E8%BC%AA

菌輪の発生には諸説あるようですが、マツタケの発生調査の結果から、楕円状のコロニー(菌糸)が重なってできるといわれています。つまり、この一帯にはキノコの菌糸が幾重かに張り巡らされているということですね。
面白いことに、この輪の中だけ植物の成長が異常に良くなる(あるいは悪くなる)という現象が見られることがあります。このことから、北欧では妖精が輪になって踊った跡とされ”fairy ring(妖精の輪)”などと呼ばれています。

植物の成長が阻害されるのは、菌が栄養を使ったり、菌膜によって植物が窒息するためとされていますが、成長を促進する場合は菌糸が化合物を分泌しているためであるとされています。河岸教授の研究室では、以前にコムラサキシメジ(Lepista sordida)というキノコから、植物の生長促進化合物を単離されていましたが、今回は他のキノコ(Russula vinosa: ベニタケの仲間)から同様の成長促進効果を持つ化合物を単離しておられます。

植物を助けることでキノコ側にメリットがあるのか、結果的に成長促進してしまっているだけなのか、相互関係は分かりませんが、菌根菌と植物との間にインタラクションがあるのであれば、マツタケなどの発生ファクターへの手がかりになるかも知れませんね。

現象から原因物質を見つけるのは非常に難しく、私も現在同様の研究に携わっておりますが、分画方法に頭を抱えております。
このようにスッキリした結果が発表できるように精進したいと思います。その時はご一読いただければと思います。

2016年7月1日金曜日

夏といえば、冬虫夏草!


梅雨も終わりが見えましたが、まだまだ蒸し暑いですね。

さて、梅雨といえば、やっぱり キノコ ですよね。

残念ながら、私は前回の更新以降まともにフィールドワークできていません。
しかし私のSNS上には、山や林におけるキノコ発見報告ばかりが上がってきて、羨ましい限りです。

夏のキノコといえば、やはり“冬虫夏草”ですね(思い込み)。

キノコには腐生性と寄生性(共生含む)の両タイプがあり、冬虫夏草は昆虫などを栄養とする寄生タイプのキノコです。“冬は虫だが、夏には草になる”という意味・・・かどうかは定かではありませんが、幼虫などに寄生し、初夏あたりでキノコとして生えてきます。
面白いことに、種によって生えてくる虫(宿主)が決まっています。通常“冬虫夏草”とは、漢方や薬膳などに利用されるOphiocordyceps sinensisのことを指しますが、様々な寄生タイプのキノコがいて、まとめて冬虫夏草と呼んでいます。

最近、私の研究室でも注目していて、見た目がグロテスクなのが面白いのか、生態が怖いからか、学生が嬉々として探してくれるので大助かりです(以下の写真は学生が見つけたもの)。


クモタケ: 地中に巣を作るトタテグモなどに寄生。つまり、クモは家で寝ている間に絶命。
初夏に粘土質の地層を見ると生えていたりします。
コニシセミタケ?: 絶命して落下したセミの死体から生えてくるようです。
二種類生えているように見えるのは完全世代と不完全世代と思われます。
タイワンアリタケ: アリに寄生。年中見られます。
アリは高いところにある葉の裏側で、葉脈に噛み付いたまま絶命。

冬虫夏草の薬用成分は宿主(昆虫)に生えているときしか生産されないらしいです。
アリなんかに生えるやつは本当にちょっとしか採取できないです。
セミなんて生育に7年もかかっちゃいますね。

そんな理由から、先に挙げたO. sinensisの他はほとんど、そもそも詳しく調べられていません。私の研究で創薬のきっかけとなる物質などが見つかるといいなぁ。

ただし、冬虫夏草を見つけるためには湿度の高い林で、這いつくばるように探さなければいけませんけどね。

2016年5月21日土曜日

フィールドワーク実習に参加して

はじめまして。
この度、Japan prizeの助成をいただけることとなりました、徳島大学生物資源産業学部の 阪本 鷹行(さかもと たかいく)と申します。
難しいことを語るのが苦手で、今後もこのブログは日記のような乱文になると思いますが、ご容赦いただければ幸甚です。

先日、フィールドワーク実習で然る植林地に行ってまいりました。実習目的はスギ&ヒノキ混交林における毎木調査で、単位面積当たりの樹種・胸高周囲長・樹高・本数を計測するというものです。
・・・久しぶりのフィールドで、現在絶賛筋肉痛でございます。
あと、この実習は私の研究分野ではありません。
さらに言えば、初夏の暑さと、スギ&ヒノキ花粉の残り香を侮っておりました。汗と涙と鼻水と・・・ちょっとした熱血漫画のような惨状でした。
私には在日タイ人の知人がいるのですが、彼女も日本に来て花粉症が発症し、非常に悩まされています。日本は国際的な問題として花粉対策に乗り上げるべきでは?

さて、私の研究対象は樹木ではありません。ザックリ述べると、酵母やカビ、海洋性微細藻類から土壌バクテリアまで幅広い微生物を相手に、有用物質の発酵生産を目指しています。
中でも一番興味がある微生物はキノコです。
いや、もうキノコは単純に好きです! 食べるのも、愛でるのも、グッズを手に入れるのも好きです!!
実は、このフィールドワークも野生キノコの観察ができると思って同行しましたが、間伐材が放置された針葉樹林ではなかなかキノコが見つかりませんでした。

樹木に生えるキノコは多々ありますが、多くは広葉樹を好んで生えてくる傾向があります。スギやヒノキに好んで生えるキノコで、健康食品あるいは薬になる種を開発できれば、放置植林も管理が行き届いて花粉が軽減されませんかね?
実は、実際にヒノキやスギの間伐材でナメコなどの食用キノコを栽培する例はいくらかありまして、商品としても栽培されています。でも日本の花粉問題は一向に改善しませんねぇ。生産効率が悪いのか、需要が少ないのか、林業活性化に大きな影響を与えるには至っていないようです。
生産するなら、やはり薬かエネルギーですかねぇ。まだまだ研究の余地があります。

今までスギ&ヒノキ林なんぞには立ち入りたいとも思いませんでしたが、今回いざ足を踏み入れると新しい気持ちになれました。キノコで花粉を根絶やしにしてやりたいと思います。そんな研究をしたい・・・。
やはり、ラボに籠ってばかりではダメですね。現場に出ないと。そしてそのためにも体力作りしないとですね。

実習地近くで見つけたフサヒメホウキタケ。マツを主とした針葉樹の倒木に生える。食用には不向き